column コラム

多産多死の商品開発

ある製造業のクライント企業で、選抜チームの方々から悩みをお聞きしました。いわく、

年間300種類以上の新製品を上市しながら、次年度まで生き残るのは本当に1、2商品程度。まさに「千三つ」の世界です。その為に不良在庫が積み上がりその廃棄コストもここ数年上昇しているそうです。実際に売上は微増であるものの営業利益率は低下し続けています。

このメカニズムは、
*「大手小売り業からの専用製品開発の要望」や、「売上志向の戦略目標設定」により、
*「十分にコンセプトが練れていない製品が多数出現」。その為に
*「営業が月に30品目近くある新製品全てに十分な時間が使えず、やむなく絞り込んだ品種を中心に商談」。そうなれば
*「売り場で十分なサポートを得られない商品が販売促進不足」となり、
*「小売りはPOSデータ上、売れ行きの悪い商品が定番打ち切り」。そして
*「この商品が卸を経て返品」され、
*「大手小売りへの納品には、賞味期限の1/3期日を超えた商品の制限を課すので、多くが在庫となる」
*「メーカーは近年、不明瞭な流通にその手の在庫を流すとブランドを傷つけかねないので、実際には食べられる在庫が焼却処分 ⇒ コストアップ」

加えて小売りからは「売れすぎて欠品すれば、その商品が売れていれば得られたはずの利益保証を求められ」「売れなければ返品」という要求から来る、ジレンマ。

小売りが悪いわけではなくて、彼らも競争をして顧客にアピールしようとしています。

このデフレ経済の中で少しでも安く、新しく、美味しいものを望む消費者が、上記のメカニズムを知らずに、このスパイラルを加速しているのです。

メーカーがこの事態に対応するには、商品ごとに売上予測精度を上げる努力は勿論ですが、それが簡単にできれば苦労はしない。 そうなると基本に帰って 「製品数を絞り、売れる商品を開発をする」、「戦略目標の重点を売上から利益にシフトする」しかないのです。しかし、製品を減らす勇気がない。競合に小売りの棚のを占有面積を取られることを恐れている。

チームと一緒に、その企業のトップマネージメントの方にお伝えすべきは、その「勇気」が持てるような着実なプランと、納得のいく成功事例なのではないかと思っています。

来週、この課題に関してのミーティングを持ちます。ここで何らかの妙案を出せれば良いのですが。
同じようなことで悩んでいる企業が多いのではないでしょうか。