金融危機に端を発した経済不況は広くかつ深く鎮座しはじめており、私がお付き合いしているクライアントの企業のみなさんと討議すると、その深刻ぶりが伝わってきます

曰く、

  • あるファクトリーオートメーション用機器メーカーでは、9月まで営業会議で受注拡大の数値を追っていたのに、12月になって数値を集計したら受注が7割消失
  • ある自動車メーカーでは売上が昨年対比3割以上急降下。進行中の機種の開発中止。新工場計画停止。文房具をペン1本新規でもらうのに申請が必要
  • ある金融機関では現有株価の棄損5割。海外金融機関へつぎ込んだ資本の棄損が甚だしい
  • 不況に強い業種と思っていたあるトイレタリーメーカーでも年末商戦で不発。1割近い売上減

しかしながら、その一方で

  • ある菓子製造メーカーでは、消費者のPB(ストアブランドで通常は低価格商品)志向が強くなったのと同時に、カテゴリーシェアNo1であるため3位以下ブランドが敗退してかえって売り場の棚割合いが増加。勢い消費者がPBかナショナルブランド(メーカーの作ったブランド。国民的なブランド)のTop of the mind BRAND(カテゴリーでの第一想起、つまり尋ねられると一番に思い出す)を購買するので、売上は向上している。加えて海外からの原材料調達が円高によりコストセーブ側に働き、今期は増収増益の予想。増収と周囲に知られると小売業企業から値下げ要求が出るので、業績好調を口外しないようにしている
  • あるトイレタリー企業ではここ数年、口腔内ケアの動きが底堅いので、タイムリーな新製品投入と、店頭プロモーションを組んだら昨年度対比130%の売上達成

など、悪い話ばかりではありません。

私の感想としては、暗い話をしていても経済が萎えるだけなので、そろそろ未来思考に転換していく時期が来ているということ。経済は集団の心理学であると某コンサルタントも提唱していますね。

  • 日本の自動車メーカーにとって、現在はまさに将来の再飛躍に向けたふるい落としの試練のとき。ここを抜けると大躍進が待っている。米国BIG3や欧州のメーカーが疲弊して必ず大規模な再編が起きる。米国人は、1,2年我慢してもそれ以上古い車を乗り続けられないし車なしで暮らせない。それであれば、このピンチをチャンスに変える準備をすべき Flexible manufacturing  に磨きをかける。スキルを上げて社内人材の流動化を促す。繁忙期にはできなかった、腰を据えた戦略を考える。なぜならBIG3とその系列ディーラーの選別的救済は、大きなビジネスチャンスである
  • 飲料・食品企業にとっては人口の頭打ちから来る長期低迷から抜け出すチャンス。円高の梃子を効かせてアジアを含む成長市場の企業を傘下に組み込むことができる
  • 新製品、ビジネスの仕込み。ユニクロのように機能と価格のバランスが取れればニーズはある
  • これらの動きを加速すればこそ、減殺しかねない動きを封じること
    • 政府は加工食品の源材料の産地明記を仕掛けようとしている。食品のトレーサビリティを向上させることは結構。しかし加工食品企業ではスポットで安価な原材料を世界中から購買しており、その都度パッケージを変えることは不可能である。改正建設基準法、貸金業法、金融商品取引法と続いて、ビジネスの現状に無知な官僚が無理強いすると産業の発展を阻害する。
    • 暗いだけで後ろ向きな新ビジネス選定会議。心理的な委縮が発想と行動を縛ることによって本来なら取り組めるはずの前向きなビジネスチャンスを見逃している。
    • 15年前の不況時に起こした人材戦略の過ちにより、多くの上場企業では35~40歳の人材が極端に少ない、いわゆる「ふたこぶラクダ」の人員カーブに苛まれてきた。2007年問題で失いつつある貴重な技術者からの技術継承が重要であると唱えていながら、この不況から新規採用や教育、技術継承への投資を盲目的にフリーズする企業が出ている。

“逆境も考え方によっては素晴らしいもの” William Shakespeare