今回はちょっとくだけた小話。

バーゲンシーズンです。
良く行くメンズショップの店員さんが近寄ってきて、「本来のバーゲンはXX日後なんですが、菅野さんが欲しいものがあったら、取り置きすします。定価からXX%オフです・・・」と、こそこそ話す。

どうやら、紳士物セレクトショップは全滅!まったく売れない様子。これはユナイテッドアローズもバーニーズもビームスも全部同じことのようです。不況はユニクロのようなベーシックカジュアル、H&M、Forever21のようなファストファッションの勝ち組を除いてファッション業界に厳しい。

それで先週、御殿場のファクトリーショップにも足を延ばして市場調査(?)しました。

ここも同様の現象で、驚くような価格破壊が進行中。某ショップでは、通常のスーツは7-8万円ですが、その上に ブラックレーベルと、パープルレーベルという上位ブランドがあって、それぞれスーツで25万円、60万円程度です。

なんとそのブラックと、パープルが8割引きになっていました。しかも2つ買うと2つ目はそのまた半額! 「これ、石鹸の安売りかい!!!!」「これは!天が味方している!」と喜び勇んで買ったら、直しはここでちゃんとできないとのこと。店の人が「折角の最高のお品なので、ちゃんとしたところで直してください」と言われて、翌日原宿の本店へ。

「これ、バーゲンで買ったけど直せる?」「かしこまりました。それにしてもお客様はとても良いお買いものをされました。これ、私も狙っていたものなのです。でも・・・・」 とか何とか。こんな良いカシミアのジャケットを超安値で売っていることが悔しそう。

荘厳なフィッティングルームで様々な蘊蓄を語られて、2人がかりで採寸。右手が7ミリ左より長いので、袖を出し、袖口を本切羽でボタンを重ねて付ける。ジャケットのウエストも0.5ミリずつ絞りました。ズボン裾は当然ダブルで4.5cm・・・とサルトリアのようなこだわりよう。

で。 全て終了してそのお直しの会計をうやうやしく持ってきたら、「スーツ1つ、ジャケット1つで、計42、000円です」とにっこりされた。スーツ代金より高いじゃん!

「江戸の敵を長崎で討たれた」 感じ・・・

閑話休題

ブランドは量を追うのと質を追うのとのバランス作業で作る。質がリードしないといけないのは論ずるまでもない。商品の質の高さやブランドへのこだわりが希少価値を形作っていたものが、売上を追って誰でも持てるようにしたとたん駄目ブランドになる。 頭では皆分かっていることだ。

昨今の実情は、家族経営的にやっていた企業に、グローバリゼーションによって売上拡大の誘惑がかかり、資本増強のために他人資本を入れて、その結果規模拡大を強いられることでブランドが駄目になるという悪循環になっていく。 その資本の出所がブランドの扱いに慣れている他のブランド・コングロマリット(LVモエヘネシーやグッチなど)ならば、まだ良いだろうが、短期利潤を求めるファンドなどであったら、結果は火を見るより明らか。ブランドの堕落である。結局売れなくなる。最近米国発のブランドC社など、アウトレットでの安売り状況を見るとかなり危ういと感じる。

一旦そのサイクルに入ったブランドが、元の品質重視で価格堅持というポリシーに立ち返ることに困難を極めることになる。ヴィトンやエルメスといった超一流といわれるブランドは決してバーゲンをしない。もし、したとしても極々一部の人のみ招待して行うので一般人には分からない。噂ではあるが、某ブランドは売れ残った在庫は海に沈めるか焼いてしまうそうである (環境に優しいとは言えないな・・・)

日本は工業製品のブランドづくりには長けていても、この手のファッションブランドを作り上げるのが下手だ。ファッションブランドには製品の機能以外の「ブランド・ストーリー」という情緒価値の付与が必須。このストーリーが弱い。件の「売れ残りは海に捨てる」というのもそれの類だし、砂漠の真ん中でクランクシャフトが折れたと連絡したら修理マンが直ぐに飛んできて直し、後で会社にお礼を言ったら、「何かの間違いでしょう。私どもの車のシャフトは折れません」と答えたロールスロイスの話なども「ブランド・ストーリー」

ストーリー作りには歴史が必要な場合が多いが、最近流行りのプレミアムジーンズである「ヤコブ・コーエン」や「PT」のパンツなど、新しいブランドもイタリアなどからは台頭している。ヤコブ・コーエンは「デニムは世界で最高の日本産。スタイルはイタリアのサルトリアの技術。テーラードジャケットに会うデニム」というストーリーで、1本4万円のジーンズが売れている。

ユニクロが、言わば「ファッション業界のトヨタになる」ことはできる。つまりコスト削減プラス機能価値の付与である。ここにストーリーを加えられるような世界ブランドが日本から現れないものだろうか?そこまでできれば、本当に不況と無縁の企業になれる