column コラム

新潟市加工食品プロジェクト

8月になってからニューフードバレー構想の一貫として加工食品企業のためのセミナーを行った。「食の売れる商品づくり」というタイトル。売れる仕組みの構築法を、小賢しく聞こえがちな「マーケティング」という言葉を用いず、商売として実践的に使える内容にしていきたいということが主催者である市の推進室の思いであった。

当日は食品メーカーやデザイン関係、印刷やパッケージ関連企業の皆様100余名の参加をいただいた。セミナー後、参加者へのアンケートの結果は当初よりの方向性に対して確信できるものとなった。 96%の方がセミナーの趣旨に高い関心を示され、46%が「このような商品開発」への支援を期待し、同数の方が「販路拡大」に対する支援を望まれていた。また、商品開発に興味を示していただいたうち89%の参加者が「今後の参考として社内で検討していきたい」との意向を示された。

第1部の私の講演部分として商品企画の要諦をお話しした。その内容は、


①商品ブランドと商品特性(売り文句)、想定顧客の3要素を商品企画の際に重視すること
②かつ、その中でも「Big One」つまり最大に顧客へアピールしたいことは何かという、商品の中核をもっと深く考えること
③そしてそれを伝える術を考えること

これは私が食品企業のマーケティング担当者として長年実践してきたことや、企業向けのコンサルテーションを踏まえた知見によるもの。大手企業ならまだしも、このような基本的なことを実行するのは容易でない。

新潟の食品は、「地」の素材があまりにも素晴らしく、かつ新潟人に何事にも手を抜かずに粘り強くやり遂げる気質があるために、秀逸なものが多いと感じる。だが、そのきらきらと光る素性を、首都圏の消費者にちゃんと伝える技が拙い場合が多い。思い入れが思い込みになっていたりする。

第2部として、デザイナーとして高名な鹿目尚志氏にも講演をいただき、その後一緒にパネル討議に移行した。鹿目御大の「経営者は市場調査の結果に一喜一憂すべきでなく、伝えたいことへの信念を持つべき。デザイナーはクライアントの意向のみ、または意匠のみに囚われるな。クリエイティビティを忘れてはいけない」という警句はことのほか参加者の胸に残ったはずである。

こういった試みを継続して行く必要がある。