2010年総括
2010年も仕事納めになりました。
今年を振り返って見ると、いくつか目についた企業の人材育成の潮流がありました。下記の3点が顧客企業への顕在化したチャレンジや解かなければならない課題であり、そのお手伝いのなかで私が重要であると感じたポイントを取り上げたいと思います
① Globalizationへの取り組み加速化
Globalizationは言わずもがなでしょうが、特に急激な円高、事業環境の悪化、国内消費低迷から、事業の海外展開は急ピッチで進展しています。
商社などの海外事業を古くから取り組んできた企業では、新規事業投資案件は国内や先進国から新興国、途上国に既にシフトしており、更に先進的な企業はインドやロシア、中東を通り超してアフリカへと新たなビジネスへの種蒔きを開始しています。
自動車関連や家電関連メーカーはこのシフトが鮮明でした。多くは中国がその中心ではありますがインドネシア、タイ、ベトナム、インドなどへの拡大も視野に入ってきました。
一方で加工食品業など、これまで事業の特質上地域性や土着性が高く、堅調な業績に支えられていた企業の多くは、自動車関連や家電関連企業と比較すると売上の海外比率が高くありませんでした。しかしここに至って人口までもが減少し、いよいよ本格的に外に打って出るしか無くなっています。先進国には曲がりなりにも支社を置いていますが売上は伸び悩み、「アジアシフト」という掛け声はあるものの、アジアの新興国などはまだまだ緒についたばかり。多くの金融関連企業にとっても海外事業拡大はこれからの問題です。
こういった3レベルの海外展開の進捗具合はあるものの、グローバル人材の確保、育成という課題は各社共通のものです。
今年私が担当したアクションラーニングのプロジェクトには、日本人参加者が海外からの選抜メンバーと一緒にワークショップを行うものがありました。日本人の次期リーダーには、海外事業の戦略プランをリーダーシップを発揮してまとめ上げることが期待されています。ここでは討議中、多くの日本人参加者のコミュニケーション能力は白熱した議論で戦えないレベルでした。これは英語力のみによって問題が生じているのではなく、話の論理性と相手に自説を主張しようと願う意志の問題が大きいと感じました。北米、欧州やブラジル、メキシコなどからの参加者の文化的背景や思考パターンの理解も重要でした。また、似通った製品を扱っていながら地域によっての顧客ニーズ、商習慣の大きな隔たりをお互いに理解出来ていないことも溝を生んでいました。本社目線で「何故出来ない?」と問うより、「本社から何の手助けがあれば出来るのか?」というアプローチが必要です。最終発表はこれからですが、これらのポイントを参加者には更に理解して役員プレゼンテーションに臨んでもらおうと思います。
② 強い新製品、物作りへの回帰とイノベーションの探求
今年はあるメーカーで新製品開発のワークショップを行いました。新製品開発におけるイノベーション能力の向上は多くの日本企業の最重要課題でしょう。低い人件費と製造ロットの多寡を梃子にしたにコスト競争力では後手に回ることが多くなっています。かといってあまりに高機能過ぎて顧客が使いこなせないほどの高付加価値商品に逃げ込んでも、世界で勝ち抜くことは出来ません。必要なのは、潜在的な顧客ニーズとコストの、バランスを少しだけ外して顧客価値を感じさせる方法論を確立することです。
その為には、特に海外市場のニーズを如何に「個人の思い込みから離れて」理解するか?という課題がありました。エスノグラフィーなどの観察手法を活用して顧客のインサイト(洞察による気づき)を得ることで、顧客のニーズ「仮説を発見する」。その発見した気づきを使って、更にニーズ「仮説を掘り下げる」調査を行う。その後に仮説検証の為の定量数値データや、外部の統計の専門家がまとめ上げた客観的なレポートを判断材料にする。といった、しっかりしたステップの学習、データ収集方法のスキル訓練が重要でした。これらはあまりにマーケティングの教科書に記載されている常道ととられていて、実践されていないか、極端に端折られていることが多いのです。また、これらは一部の商品開発担当者が理解しておけば良いものではなく、クロスファンクショナルチームの全員が一同に介して体験することで、同じ言語体系を持つことが大きな意味を持つと実感できました。具体的には現実のプロジェクトで使用されたフォーカスグループインタビューのビデオやそのレポート、定量調査のクラスター分析結果などを実プロジェクトとして追体験し、新しい顧客ニーズを抽出し、顧客価値の提案をするワークショップが極めて有効でした。
③ マーケティング3.0への対応
コトラーが指摘した新しいマーケティングのアプローチは、単なるマーケティング論ではなく、もっと上流の企業理念、つまり"企業としてのあり方"がテーマとなっています。ソーシャルメディアが消費生活に大きな役割を果たすようになった時、本当の企業姿勢そのものが簡単に素早く外部に共有され、見せかけの社会貢献姿勢や通常のCMから発信される胡散臭い売り文句が全く効かなくなるのです。 反対に、真摯に向き合えば顧客と企業が顧客価値を協働・共創するマーケティングが生まれます。利己的・短期的利潤でなく、長期的に社会問題にインパクトを与えることを目指す企業が強くなっていくということです。
この流れに対応して、マーケティングの手法やその組織を如何に対応させるべきか? という課題が増えています。これはソーシャルメディアに親和性の高い消費者を相手にする企業は既に気がついていて、実践に移しています。課題が大きいのはそのソーシャルメディアの破壊力から遠い、又は気づくのが遅い規制業種やB2B事業を主とする企業です。また、組織構成が堅く、社内で情報遮断を行うことが当たり前で、社内では有害サイトを細かに指定してネット接続もままならないような企業で、反応が鈍くなりがちです。
感度の高い、若い受講者はその破壊力を実感しているので反応も早いのですが、実権がない。力と予算を持っている上のレベルの方にこの破壊力を実感していただくのが実行の近道です。
今年を振り返って見ると、いくつか目についた企業の人材育成の潮流がありました。下記の3点が顧客企業への顕在化したチャレンジや解かなければならない課題であり、そのお手伝いのなかで私が重要であると感じたポイントを取り上げたいと思います
① Globalizationへの取り組み加速化
Globalizationは言わずもがなでしょうが、特に急激な円高、事業環境の悪化、国内消費低迷から、事業の海外展開は急ピッチで進展しています。
商社などの海外事業を古くから取り組んできた企業では、新規事業投資案件は国内や先進国から新興国、途上国に既にシフトしており、更に先進的な企業はインドやロシア、中東を通り超してアフリカへと新たなビジネスへの種蒔きを開始しています。
自動車関連や家電関連メーカーはこのシフトが鮮明でした。多くは中国がその中心ではありますがインドネシア、タイ、ベトナム、インドなどへの拡大も視野に入ってきました。
一方で加工食品業など、これまで事業の特質上地域性や土着性が高く、堅調な業績に支えられていた企業の多くは、自動車関連や家電関連企業と比較すると売上の海外比率が高くありませんでした。しかしここに至って人口までもが減少し、いよいよ本格的に外に打って出るしか無くなっています。先進国には曲がりなりにも支社を置いていますが売上は伸び悩み、「アジアシフト」という掛け声はあるものの、アジアの新興国などはまだまだ緒についたばかり。多くの金融関連企業にとっても海外事業拡大はこれからの問題です。
こういった3レベルの海外展開の進捗具合はあるものの、グローバル人材の確保、育成という課題は各社共通のものです。
今年私が担当したアクションラーニングのプロジェクトには、日本人参加者が海外からの選抜メンバーと一緒にワークショップを行うものがありました。日本人の次期リーダーには、海外事業の戦略プランをリーダーシップを発揮してまとめ上げることが期待されています。ここでは討議中、多くの日本人参加者のコミュニケーション能力は白熱した議論で戦えないレベルでした。これは英語力のみによって問題が生じているのではなく、話の論理性と相手に自説を主張しようと願う意志の問題が大きいと感じました。北米、欧州やブラジル、メキシコなどからの参加者の文化的背景や思考パターンの理解も重要でした。また、似通った製品を扱っていながら地域によっての顧客ニーズ、商習慣の大きな隔たりをお互いに理解出来ていないことも溝を生んでいました。本社目線で「何故出来ない?」と問うより、「本社から何の手助けがあれば出来るのか?」というアプローチが必要です。最終発表はこれからですが、これらのポイントを参加者には更に理解して役員プレゼンテーションに臨んでもらおうと思います。
② 強い新製品、物作りへの回帰とイノベーションの探求
今年はあるメーカーで新製品開発のワークショップを行いました。新製品開発におけるイノベーション能力の向上は多くの日本企業の最重要課題でしょう。低い人件費と製造ロットの多寡を梃子にしたにコスト競争力では後手に回ることが多くなっています。かといってあまりに高機能過ぎて顧客が使いこなせないほどの高付加価値商品に逃げ込んでも、世界で勝ち抜くことは出来ません。必要なのは、潜在的な顧客ニーズとコストの、バランスを少しだけ外して顧客価値を感じさせる方法論を確立することです。
その為には、特に海外市場のニーズを如何に「個人の思い込みから離れて」理解するか?という課題がありました。エスノグラフィーなどの観察手法を活用して顧客のインサイト(洞察による気づき)を得ることで、顧客のニーズ「仮説を発見する」。その発見した気づきを使って、更にニーズ「仮説を掘り下げる」調査を行う。その後に仮説検証の為の定量数値データや、外部の統計の専門家がまとめ上げた客観的なレポートを判断材料にする。といった、しっかりしたステップの学習、データ収集方法のスキル訓練が重要でした。これらはあまりにマーケティングの教科書に記載されている常道ととられていて、実践されていないか、極端に端折られていることが多いのです。また、これらは一部の商品開発担当者が理解しておけば良いものではなく、クロスファンクショナルチームの全員が一同に介して体験することで、同じ言語体系を持つことが大きな意味を持つと実感できました。具体的には現実のプロジェクトで使用されたフォーカスグループインタビューのビデオやそのレポート、定量調査のクラスター分析結果などを実プロジェクトとして追体験し、新しい顧客ニーズを抽出し、顧客価値の提案をするワークショップが極めて有効でした。
③ マーケティング3.0への対応
コトラーが指摘した新しいマーケティングのアプローチは、単なるマーケティング論ではなく、もっと上流の企業理念、つまり"企業としてのあり方"がテーマとなっています。ソーシャルメディアが消費生活に大きな役割を果たすようになった時、本当の企業姿勢そのものが簡単に素早く外部に共有され、見せかけの社会貢献姿勢や通常のCMから発信される胡散臭い売り文句が全く効かなくなるのです。 反対に、真摯に向き合えば顧客と企業が顧客価値を協働・共創するマーケティングが生まれます。利己的・短期的利潤でなく、長期的に社会問題にインパクトを与えることを目指す企業が強くなっていくということです。
この流れに対応して、マーケティングの手法やその組織を如何に対応させるべきか? という課題が増えています。これはソーシャルメディアに親和性の高い消費者を相手にする企業は既に気がついていて、実践に移しています。課題が大きいのはそのソーシャルメディアの破壊力から遠い、又は気づくのが遅い規制業種やB2B事業を主とする企業です。また、組織構成が堅く、社内で情報遮断を行うことが当たり前で、社内では有害サイトを細かに指定してネット接続もままならないような企業で、反応が鈍くなりがちです。
感度の高い、若い受講者はその破壊力を実感しているので反応も早いのですが、実権がない。力と予算を持っている上のレベルの方にこの破壊力を実感していただくのが実行の近道です。