column コラム

広告費の変遷に思うこと

毎年株式会社電通が発表している、日本の広告費2008年集計を見ていると、マーケティングの変化、胎動が感じ取れます。まず、 2005年から広告費に「プロモーションメディア広告」としてフリーペーパー(R25やホットペッパーのような無料雑誌)を入れ込んだので、2007年まで広告費が一見増大して見えていました。ところがそのような統計上の変更をしても総広告費は2007年の7兆191億円から2008年、6兆6926億円へと5%近い減少です。 その中でもマス4媒体(TV,新聞、ラジオ、雑誌)と言われる旧来からの主媒体の凋落が大きく、長らく媒体の王であったTVはここ4年連続で広告費を落として2008年は1兆9092億円になりました。この数値は過去13年間1995年以来の最低水準です。1995年とは、阪神淡路大震災が起こり、東京都知事選挙で青島幸男氏,大阪で横山ノック氏が当選し、円高が止まらず1ドル=79円75銭と最高値を更新した年です! 一方広告費用で伸びているのはインターネット関連で、1998年からここ10年間でCAGR(年平均成長率)で50.9%と驚異的な伸びを示し、2008年には6983億円となり、新聞の8276億円に迫る勢いです。2004年にラジオを抜き去り、2005年には雑誌広告を超え、とうとう新聞まで射程距離内になったのです。ネットの中でも、現在は固定ネット(PCのバナーなど)が大きいのですが、今後は検索連動型が増え、特にモバイル関連の出稿が大きく増加することが予想されています。 2007年から2008年にかけての広告出稿を激減させた企業の業態も経済状況を反映しています。特に金融(332億円 減)、不動産・住宅設備(255億 減)、情報通信(253億円 減)自動車(246億円 減)などの業種が顕著に4マス媒体への出費を減らしており、4マス媒体は合計で2704億の減少です。 トヨタ自動車は例年1000億円以上の広告予算を計上していましたが、それを今年半減させる意思があると報道されていました。不況期には益々この流れが加速されるでしょう。日本TVをはじめ、民放各社の決算は散々たる状況で、その他の4マスの媒体社や広告代理店の決算も大変厳しいことが予想されています。 その中にあっても、趣味・スポーツ用品関連(123億円 増)、食品(21億円 増)、医薬・医療用品(8億円 増)など、内需型の業種は4媒体への広告費を増加させています。 また、ネットレイティングスによれば 2008年の「推計広告費用ランキングではソフトバンクモバイルがトップで、以下、リクルート、富士通、マイクロソフトの順。また単価の高い広告枠へ積極的に出稿したトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業がベスト10入りしたほか、サントリー、日本コカコーラなども上位に並び、ナショナルクライアントと呼ばれる大企業のバナー広告活用が定着している。」ということです。 http://ibukuro.blogspot.com/2009/03/2008310.html 今年は人々のTV視聴シェアを奪い取るアクトビラなどのネット接続によるコンテンツ配信事業や、多チャンネル化、携帯やスマートフォンでの動画配信などが大きく伸びるでしょう。民放や広告代理店 のまさにサバイバルの年です。いつまでも不況と低予算を理由にして「クイズ」と「お笑い」だけの番組編成を続けていられなくなるはずです。 一方、その中で、マーケティング戦略がしっかり策定されていて長期的展望を描ける企業にとって、この状況はブランド構築のチャンスであると認識するべきです。 この状況を踏まえて強気に交渉すれば、いままで高値の華だったTVなど4媒体のコストが安くなる可能性があります。その際重要なのは、アルファ・ブロガーへのサンプリングやイベントなどの新しいマーケティングアプローチと、4マス媒体の掛け合わせを上手くクロス・メディアとして設計すること。そして自社のサイトをメディア化することで、販売に直結する仕組みを構築することです。マーケティングの「フラット化」・・・つまりユーザーとの関係が参加型でフラットになること を踏まえたマーケテイングの変化が求められます。 不況時にも勝ち組は出ます。私がお手伝いできる企業のみなさんが、この状況をチャンスとして捉えなおししてくださることを切に願います。