column コラム

グローバル人材育成プラン

戦略コーチングとして、昨年末から今年にかけてある企業の「グローバル人材育成プラン」の議論をさせていただきました。

その際に一番議論になったのは、その会社のトップが目指す「グローバリゼーション」のレベルについてでした。私がその議論を明確にするために思いついたフレームワークは、日本企業がグローバリゼーションを標榜する際に、縦軸に「技」、横軸に「心」を取ると4象限に分かれ、そして成すべきことが全く異なるということでした。企業トップの志向によっては、多国籍企業の進化発展モデルとして、「グローバル」や「マルチナショナル」「トランスナショナル」を超えて、INSEADのイブ・ドーズ教授の標榜する、「メタ・ナショナル」 レベルの企業発展形まで考慮するべきかもしれません。

第1象限:心も技もグローバル志向 その際は社長の国籍や本社所在地も適材、適所。会議の公用語は当然ながら英語でしょう。日本では「日本板硝子」が典型例。私が所属していたネスレやマッキンゼーもこれにあたり、歴代の社長の国籍は多種多様。

第2象限:技は世界から、でも心は日本企業。従って社長は将来も日本人でしょうし、役員の構成も、申し訳程度に他の国から起用しますが、本社は日本から動かさない。会議は日本語で、海外の参加者には通訳がつく。企業例は研究所を海外にも展開しつつ、日本に根がある企業。ホンダなど。

第3象限:技も心も中心は日本。海外事業はしっかり展開するけれど、いわば日本経営の輸出。コマツ、ダイキン、トヨタはこの例。良く考えてみると意外ですが、トヨタの社長が外国人になることはしばらくの間想定していないと思います。海外の企業でこの典型は「コカ・コーラ」。

第4象限:心はグローバル志向で、社長は外国人もありえますが、優位性の根には日本の技、こだわりが中心。代表例はソニー。

本当の意味でグローバル化しようとしている日本企業はどれくらいあるのでしょうか?グローバルといいつつも、第1象限と第2象限の区別をつけていないことが多いようです。もっと言えば、対外的に1象限のような印象を与えつつ根が第2象限である企業は海外従業員に後々失望を与えることになりかねない。「我々のポリシーは当面第2象限」と言ってしまうか、「第3象限で、日本の良さを世界に広めます!」と言ったほうが分かり易いかもしれません。長い時間の経過の中では、海外で大きな売上を稼ぐ企業は徐々に第1象限を希求しないと勝ち残れないのでしょうか。

皆さんの会社は現在どの象限ですか?そしてどこに向かっていますか?