サブプライム問題の被害
「サブプライム問題」は1年以上前からその存在が喧伝されていたのに、真の破壊力をずっと見極めきれていなかった爆弾でした。たった2か月前までは、「持たざる者」にとってこの問題は対岸の火事で、「富める株保有者や外資系ファンドマネージャー」に対して日頃少々やっかんでいた方は、ちょっとお灸を据えられていい気味だ・・・と留飲を下げていたことでしょう。
私も「住宅ローンはしっかり持っているが、株 持たざる者」なので、単に、米国の行き過ぎたパーティが終焉したんだなあ・・と感慨にふけっていました。16年前にMBAのファイナンスの講義で、シカゴ学派の教授が「米国はモノを作らず、その代り基軸通貨のドルによって日本からモノを買い、お人好しの日本人は儲けたカネで米国債を買うので、経済は回っている。言ってみれば米国人は日本人のお金で毎晩パーティをしているようなものだ・・・」との言葉がよみがえったのでした。
毎日刻々と乱高下する株価と円ドルレートに引きずられて、トヨタやパナソニックといった優良企業でさえPBRが大きく1.0を割るといった異常事態です。これから「行き過ぎた自由主義経済化が諸悪の根源」と狼煙を挙げて大きな政策反動が来なければ良いがなと思っていました。ここから60兆円(?)とかも保有している米国債をどうするのか?ドルを持ち過ぎている中国と組んでアジア通貨圏とやらを立ち上げる契機になるのか? そんな火中の栗を拾う真似を麻生内閣にできるのか?「いざとなったら日本は米国債を売る!」と啖呵を切った橋本首相は、これで米国にパージされたとも聞いています。うーん・・・こんな漠とした感想でした。
ですがここにきて実体経済に暗い影どころか直接的な悪影響が出てきています。コンサルティング先企業の海外事業の状況は予想外に悪くなっています。そして企業研修先でも、今後を先読みし業績の悪化に備えた予算の低減措置案が聞こえてきます。軸足が国内にある内需産業ですら、食物は摂取したのにカネという血液がめぐってこない為に栄養が体に回らず苦しんでいます。積極的な戦略展開や、高度な人材育成にやっとリソースが回りだしたと感じていた矢先に、これで振り出しに戻ったら、この失われた10年からの回復と戦略方針転換は何だったのだ?と思います。
ここ3か月のあいだ独自技術やノウハウで成長を続ける企業十数社のトップにインタビューする機会がありました。この金融危機には少なからず影響を受けていましたが、芯は元気でした。本質的にはサブプライム問題での痛手が小さく、そしてモノづくりの技術を貯め込んでいる日本の企業群がこのまま沈むわけにはいかない。日本企業には環境問題や食と農業の安心安全確保など、技術によって成長戦略が描ける領域があります。パニックに陥らずに、もう一度冷静に「成長シナリオ」を見い出すことが肝要と思います。