ここ数週間オリンピックを見る時間が長かった。1日多い日は5時間以上、これほどテレビをしっかり見るのは久しぶりでした。たぶんテレビを見る時間の通常平均は1時間強程度ではないでしょうか。普段はWEBを使っている時間のほうが長い。

見ながらつい気になったのが、パチンコ・パチスロ関連のCMの目立ち方です。「海物語のまりんちゃん」とか、「ヨン様」、「必殺シリーズ」など、普段私が接触していなかった商品やキャラクターが大量に露出されています。ここ数年徐々にTVCMへの広告出稿額は減少しており、2007年には2兆円を割り込んでいます。米国などではかなり前から「テレビCMは死んだ」などど業界の危機感をあおる出版がなされたりしてきましたが、日本でこの傾向が顕著になったのはこの3年ほど。体感としては今年はかなり変化が激しいのでは?と思っていました。

広告主である企業は原油、原材料、商品の値上げや米国の景気後退、日本の政局への失望などから、消費者が身を竦め初めていることを厳しく感じ取っています。先週お会いしたある大手加工食品会社の執行役員のお話をご紹介しましょう。その企業では今年の4月に原材料のコスト圧力により商品価格を4-9%値上げしました。4月から6月までの4半期は商品ごとにばらつきがあっても全体としては数量ベースで微減。金額ベースでは少々プラスだったそうです。ところが7月から8月を通じてじわじわと料金を据え置いた競合商品に食われだし、全国ブランド化している商品は何とか踏みとどまっているものの、他商品群ではシェアが数ポイント低下して厳しい状況だそうです。

こんな時企業は、身を守るために余分な出費を抑制しがち。外資系のマーケティング会社では費用項目として「広告費」はAbove the lineと言われ、「店頭活動やリベートなどへ販売促進費」Below the lineと言われます。そして景気後退期には、Above が削られてBelow が積み増しされることが多い。 昔私が商品のブランドマネージャーだった頃、担当商品ではできる限りこのAbove とBelowの割合を50:50近くにバランスさせました。それはその会社のブランド戦略の重要な指針でした。しかし、くだんの食品会社ではBelowが80%を超えるという状況。ブランド構築よりも速効狙いになっているようです。また、TVCFは効果測定が困難です。効果が見えやすい販売促進が脚光を浴びやすい。この企業だけの話ではなく、一般に企業は景気後退期にこうしてコストのかかるTVCFよりも、他の武器を選択しがちです。

一方、テレビ局は近年ドル箱であった地上波のCF枠が売れにくくなり、業績が悪化しています。こうした時に、テレビ局はそれまで抑制気味に受けていた (であろう) 業界からの出稿依頼も受けるようになったのではないか? または、景気後退局面でも需要が底堅いといわれるパチンコ・パチスロ業界がオリンピックのスポーツ観戦しそうなターゲットに向けて攻勢をかけているのか? たぶん両方の力ガ作用しているのだろうなと私は感じました。

オリンピックという最強のソフトであっても、想定より視聴率が取れなかった番組が多いようです。 今後地上波テレビ局は「お笑い」と「クイズ」番組ばかりの安上がりな制作方針を苦渋の思いで続け、視聴率も取りにくくなり、益々厳しい経営環境に追い込まれるのでしょう。そして一般広告主はもっと効果が測定できる、効率的なメディア選択へと舵を切るでしょう。

皆さんは最近のTVCFをご覧になって、何か気になったことはありますか?