column コラム

BBT大学の「マーケティング実践」講座

私はBBT大学で2年次必修の「マーケティング実践」を担当している。秋期講座で11月から開講し1月15日が最終レポート提出期限だ。「実践」というだけに、普段私が様々な企業で実際に戦略策定をお手伝いする折に活用している手法を大学生向けにアレンジしてある。 受講者はネットワーク上でストリーミングされる講義録を聴き講義資料のパワーポイントを確認しながら、エア・キャンパスと呼ばれるサイト上で討議し、理解できなかったことを質問しあう。クラスと十数人単位のチームが成されていてそれぞれを担当するティーチングアシスタントと手分けをして私も質問への回答や議論の活性化にあたっている。毎回講義後に課題を出し、中間レポート提出も4回ある。最終レポートは4回分のレポートの集大成として受講者自身がマーケティングや商品企画担当者になったつもりでの特定商品やサービスのマーケティングプランを提出してもらう。 今年は検討対象として携帯電話業界を選択し、企業をソニーとした。アップルのiPhoneとサムソンのギャラクシーという圧倒的な強さを誇る競合に対抗するプランを提出していただくことになっている。 講義の14回目には実際にソニー「エクスペリア」の商品企画を何年もリードしてきた担当者とマーケティングの担当者に出演していただき、これまでの携帯産業の変遷やソニーがどのように事業展開してきたかを語っていただいた。また、最後には事業にかけるそれぞれの想いと、受講生に対する期待も述べていただいた。優秀なレポートにはお二人からフィードバックをいただく予定である。 携帯市場はスマホが市場を席捲し2012年末まで劇的に伸びてきたが、先進国ではそろそろ伸長にも陰りが見え始めると言われている。450ドル以上の上位機種で高シェアを占めるギャラクシーとiPhoneが大きな利益を稼ぎ出し、3位以下の企業はその旨みを享受できていない。 日本では企業がシニア市場、若年層への更なる普及などを狙っている。 しかしこのようなデモグラフィックの切り口だけでは成功は覚束ない。そもそもシニアは「シニア」向けという括りを極端に嫌う。また、数台目のスマホを選択する顧客ニーズは1台目のユーザーと大きく異なる。そこで、「2台目買い換え市場。バッテリーの弱さに辟易したヘビーユーザー」などのこれまでにない切り口でターゲットのニーズをくくり直ししなければならない。明らかにこれは最近のシャープのIGZO液晶を使ったスマホのターゲットなので、全く異なるターゲットか、そのターゲットに対するポジショニングを創造しなければならない。 一方新興国向けには200ドル以下の下位機種が主であるが、特に今後は100ドルスマホが普及すると言われており、ここでの覇者は未だ確定していない。 そこでプラットフォームであるアンドロイドOS、iOS、Windows Phone8に加えて、HTML5に準拠していて安価に開発ができるFirefox OSやTizenがにわかに注目されている。 受講者はこのような市場の変化、特に技術やプラットフォームの変化、消費者の嗜好変化も踏まえた上で、プロのマーケターを唸らせるプラン提示を期待されているのだ。 簡単ではない課題である。プロでさえ悩んでいる。だからこそ新鮮な眼差しで顧客を捉え深く、深く考え抜いて欲しい。 1月15日のレポートを楽しみにしている。