column コラム

新・新潟食品産業モデル

過日、新潟市の都市政策研究所で定例会があり3月末の提言プレゼンテーションに向けた最終確認をしました。

その中で

①新潟には市のGDPの2割を超す最大の産業セクターである食品加工産業には、かねてより
「新潟モデル」と言うべき特長があったこと。
②それが残念ながら環境変化によって新たな方向性を模索する必要に迫られていること。
③そのなかでキラリと光る若い起業家の息吹が表れて来たこと。
④そして、如何にその動きを知らしめて、後に続く「新新潟モデル」を横展開していくか? という議論をしました。

新潟モデルの特長は、米菓産業の亀田製菓、ブルボン、三光製菓、サトウ(サトウのご飯)などや、「越乃寒梅」で有名な石本酒造、「久保田」で有名な朝日酒造など、90を超す著名な酒蔵があり、米由来の産業が中心となること。また、日本海に流れ込む信濃川、阿賀野川によって豊かな漁場を持つことで鮭や南蛮エビ、のどぐろなどの海産物とその加工品も豊かであること。また味噌、醤油など麹由来の強みも持っています。地場の厳選された材料と、県の農業総合研究所、醸造試験所、食品研究所などのノウハウが相まって発展した来たモデルでした。また、地場産業の経営者同士が経営ノウハウを分かち合うおおらかな気風があり、互いに切磋琢磨して成長してきたことも見逃せない新潟の成功企業の特長でした。

それが県の研究所だよりであった研究開発が、時代を経て県の予算が抑制され、一部企業が突出して育ち、自社研究開発力がレベルアップしたことによって、一律だった技術のコアが変化、分散してきました。企業間にも格差が広がり、世代を経た経営者間でも交流が少なくなったことなどから、この旧モデルが機能し難くなったのです。

このなかで私達は新しい「食の新潟モデル」を探索しています。農業や水産業などの第一次産業が食品加工・流通販売にも業務展開しているという2次、3次産業複合という意味で、6次産業と言われる経営形態があります。新潟ではフジタファーム(http://www.fujitafarm1866.com)や、ワナリーのカーブドッチ(http://www.docci.com/)、フェルミエ(http://fermier.jp/)などが挙げられます。

そして最近の心躍る事例としては、現在話題の糀ドリンクで銀座松屋に3店舗目を出店した「古町糀製作所」(http://www.furumachi-kouji.com/kmonogatari.html)があります。経営者である和僑商店の葉葺社長に話を伺うと、「銀座十石」というおにぎり屋さんから発して今度の新潟 古町での糀ジュースへの事業拡張に繋げたこと。自由が丘、そして今回の銀座へと店舗の拡大をしてきたこと。次に日本酒の酒蔵の経営にも挑戦することなどを熱を持って語っていただきました。自分たちの提供物・ザービスに共感していただいたら、お客様はずっと支持してくださる。銀座と新潟の事業を手がけることで、双方にシナジー効果が出る。と、若い経営者が商売(マーケティング)の神髄をさらっと言いのけていました。

「モノを売る感覚ではなく、商品をとおしてお客さまの心を豊かにしてもらうことが大事。古町糀はそれを担っている」
「初めはおにぎり屋なんてかっこ悪いと思っていた。長時間労働でキツイし。だから夢を見られなかった」
「でもあるときにおにぎりの具材の選考をして、志が高い各地生産者の方と交流していたら、(自分たちは日本の食文化に貢献しているんだ) ということに気がついた」
「それからは事業に夢を持てた。従業員にも共有してもらった。そしたら人が辞めなくなって、会社に活力が出た」

その後新たなビジネスの芽として、糀と出会いました。年に一度しか大きな現金入金が無い新潟の酒蔵から、糀を仕入れてジュースを売ることで地元産業の底支えにも寄与しています。米と糀というキーワードから事業のドメインが拡大し、酒蔵の経営にまで繋がるという、わらしべ長者のようなストーリー。聞かせる!面白い!

「戦略はストーリー」とは良く言ったものです。

葉葺社長、カーブドッチの落社長、フェルミエの本多社長、フジタファームの藤田社長も、初めから経営者として生まれ育ち、地元新潟目線から出発しているのではありません。 「今までの新潟モデル」の経営者とは趣が異なります。

また、何人かのかたは経営を開始するにあたってメンターともプロデューサーとも言うべき存在が大きな役割を果たしています。

新潟都市政策研究所としては、これらの新しい成功モデルを横展開する提言を作っていかなければならないと思っています