新潟市で40名弱の職員の方に「デザイン思考」をテーマに講演しました。 デザインということばには、「de sign」 つまり「従来の記号(意味あい)を否定、分解し、変えるという意味が含まれています。 そして近年デザインは「観察などの調査や分析による問題発見・問題解決手段」という役割を担うことまで期待されているのです。

英国では1997年のトニー・ブレア政権発足から2008年の「Creative Britain」策定までのおよそ10年間に、クリエイティブ産業振興に向けた様々な政策を実施しました。国を挙げてポップミュージックなどコンテンツ産業の振興で成功し、デザインで犯罪や医療問題なども解決しうることを証明したのです。

後を追うように韓国でもクール・コリア政策が始まり、大統領直属の国家ブランド委員会を設立して韓流ドラマ、ポップアイドルを支援し、日本市場だけでなく世界を席巻し始めました。それらソフトの人気度が高まると韓国企業ブランドへの好意度が上がり売上も増加するというシナリオを描いています。

日本の家電製造企業はアップルに戦う土俵そのものを変えられて防戦に追われています。携帯電話はもとよりコンパクトデジタルカメラやDMP(デジタル・ミュージック・プレイヤー)、果てはカーナビまでもがiPhoneに飲み込まれている。PC市場でも、特にシニアや若年層では多くの潜在顧客がiPadに奪われていくのでしょう。

優位性を保っていると幻想を抱いていた対韓国企業には、Fast Follower を標榜するサムソンに追い込まれあっという間に抜き去られたという状況です。アップルのようにイノベーションによって世界を変えようとする企業と、それを投資判断も含め素早い模倣で追従する企業に対し、日本の家電企業はナイーブにも高品質・高コストで勝ち続けられると信じていたことの不明が指摘されています。

アップルの商品のデザイン性が高いことに異論を唱える人は少ないでしょう。ですがジョブス氏は「意匠(見た目)としてのデザインを成功の鍵と言われることは嫌ったそうです。デザインは「人間の創造の根本にある魂であり、それ(デザイン)が最終的には製品やサービスの表層にも立ち現れてくる」と説明しています。

一方、意外に認識されていないことはサムソンのデザイン志向、ブランドに対するこだわりです。1993年「妻と子供以外は全てを変えよう」と経営改革を断行した李健煕会長はソニーやパナソニックブランドを越えることを目標にして「デザインこそが企業の哲学や文化を表現し企業の優位性を左右する」という信念を基に、デザイン力とブランドの強化に力を注いできたのです。日本に住んでいると韓国企業のブランド力やデザインの進化に気がつかない消費者が多いでしょう。残念ながら日本以外の国では「サムソンのテレビの方がカッコ良い」というユーザーが多いのです。

機能的価値は成熟した社会で差別化要因になることが難しい。情緒価値の中核であるデザインやブランドをもう一度見直すことは、もう避けられません。その為にはデザイナーでないビジネスパーソンもデザインの持つ力を信じ、デザイン思考を身につける必要があるのです。